手の中に入る、フジヤマ

おおみやです。長文です。


まだ寒い冬の頃のできごと。
その日は、たまたまいつもより1時間ぐらい早く事務所に行こうと思い、家を出ました。
玄関の門を開けると、目の前におじいさんが通り過ぎて行きました。
目は合ったような?合わなかったような?あまり良く覚えていません。




そそくさと急ぎ足で歩いていると、だんだんおじいさんの背中が近づいてきます。




ん〜〜。追い越すべきか?しかしこの歩行スピードだど、明らかに追い越してしまうなぁ。
追い越さないように歩いたら、結果的におじいさんの真後ろにピタリとくっついて
歩くことになったりして、その姿って滑稽〜〜〜。ぷぷぷ。と
一人でくだらないことを考えながら歩いていたら、いきなりギョロっと振り返り、
そのおじいさんは私に声を掛けてきました。やべっ!今考えていたことが伝わった?!
いやいやいや、んなこたーあるはずがない。・・・で、なんなんだろう?
ということを瞬時に思う私。


おじいさん「いや〜お姉ちゃん家は、駅から近くていいねぇ〜」
わたし  「あ、はい。便利です」
おじいさん「ここから、壮大な富士山が見えるって知ってるかい?」


へ?いきなり富士山の話かい。なんだ?このじいさんは・・・。


わたし  「ここからは、知りません。電車に乗ると高台になったとき遠くに壮大に見えるポイントは知ってます」
おじいさん「だろ〜〜〜〜。そんなのは小さいんだよ。もっと大きく見えるところがあるだよ」
わたし  「へ〜〜。もっと大きいんですかー」




あれ?私ってば、おじいさんのペースに乗っかって、まるで孫とおじいさんが駅に向かうシチュエーションになってます・・・。
でも、なんだか嫌じゃない・・・懐かしいような感じ。




おじいさん「昔はな、すぐ見えたんだよ。でも今は高層マンションばっかりだから、そこしかみえねーんだ」
わたし  「その場所って、駅に向かえば見えるんですか?」
おじいさん「もちろん!俺はもう一つ知ってるけど、それは違う駅からだから、この駅からはあそこだけ」
わたし  「大きいって、どれくらいなんですかーーーー」
おじいさん「両手をよ、こーしてさっ、三角にしてよっ、これぐらいおおきーんだっ」
わたし  「その三角の中に入るってーこたー相当大きいですねぇ」(話口調まで似てくる)
おじいさん「(自慢げに)あったりめーよ。それもよ、その場所だけから見えるんだよ」
わたし  「このまま駅に向かえば見えるんですよね?」
おじいさん「もうすぐだよ」




駅に向かう最後の階段を上がったところで、おじいさんがまた話し始めました。




おじいさん「あっこ見てご覧、あっこから4つ目の柱。あっこから後ろを振り返ると見えるんだ」
わたし  「へー。あっこの柱から4つ目ですね」
おじいさん「そうだよ、4つ目しかみえねーんだ」





いよいよ、数えて4つ目の柱に到着しました。


おじいさん「ねーちゃんよ、後ろ見てよ、手をこーやってよ、三角にしてみてみー」
わたし  「どれどれ‥‥」



すげーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
こんなピンポイントに、壮大なフジヤマが!!
嘘じゃなくて、オーバーじゃなくて、本当にこの柱の隙間から見る富士山は、本当に壮大でした。
私が一人で感動していると、おじいさんが話のまとめに入りました。



おじいさん「最近のわけー奴らはよっ、急ぎ過ぎてんだよ。少しゆとりをもってよ、ここで少し立ち止まってよ、
      富士山でも見れる余裕がねーのかなぁ。誰一人として、脇目も振らず朝のラッシュの電車に自分から
      身を投げ入れてるんだよ。こんなに壮大な富士山を見るゆとりがねーなぁー」



なんだか、私はものずごく恥ずかしいなぁ。と思ってしまいました。私も今さっきまで、おじいさんを
追い抜こうか迷う程、急いでもいなかったけど、急いでましたし。。。



再びさっき見た富士山の話に戻り、駅に到着しました。私は御礼を言って、深々と頭を下げ、
「いってきまーす!」と言ったら、おじいさんが上着のポケットからガサゴソと何か取出して、
私の手のひらに乗っけてくれたものがありました。
それは、ビタミンC入りのレモンキャンディーでした。




なんだかうれしくて、ウキウキした一日を過ごしました。
あれから、時間を見計らって家を出るようにしているのですが、その後おじいさんには未だ再会していません。
でもあれから私は、毎日柱の4本目になったら1度足を止めて、後ろを振り返り、壮大なフジヤマが見える時は
おじいさんを思い出しながら、両手を三角にして富士山の大きさを楽しんでいます。




寒い時期も終わり、あんなにきれいに見える季節は終わってしまいましたが、
早く起きた朝の出来事。日本に生まれて良かったなぁ〜と感じるひと時でした。





おじいさんにまた逢いたいなぁ。
時々忘れて急ぐことがあったり、ラッシュに押しつぶされそうになって、イラっとくることもあります。
でも、あのおじいさんの話はたぶん一生忘れないと思います。




後から発見したことが・・・あの4つ目の柱から見える1本の通り・・・・
その通りの名前が『富士見ロード』という名前がついていたのです。きっと昔はもっともっと
壮大に見えていたんでしょうね。5年以上も住んでいて、知らなかった自分。



あっぱれ!フジヤマ!
あっぱれ!富士見ロードぉ〜!



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